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イスラエルの伝統を築いた人々 その7:ダビデ⑤

<成和学生会報2016年8月号掲載>

 

哀悼の歌

ダビデのもとに、サウル王とその子ヨナタンの最期を知らせに来たアマレク人の若者がいました。彼は、生き絶え絶えのサウル王に乞われるまま介添えをしたと語りました。
これを聞いたダビデは、自分の着物を裂き、サウル王とヨナタンのために嘆きました。王を失い戦いに敗れたイスラエルの民のためにも泣きました。そして、“主が油注がれた者”を殺すことを恐れなかったアマレクの若者の命をその場で奪いました。
歌人ダビデは、深い悲しみを抱えて、イスラエルの勇者のために哀悼の歌を歌います。

 「イスラエルよ、あなたの栄光は、あなたの高き所で殺された。…ギルボアの山よ、露はおまえの上におりるな。死の野よ、雨もおまえの上に降るな。その所に勇士たちの盾は捨てられ、サウルの盾は油を塗らずに捨てられた。
 殺した者の血を飲まずには、ヨナタンの弓は退かず、勇士の脂肪を食べないでは、サウルのつるぎは、むなしくは帰らなかった。…イスラエルの娘たちよ、サウルのために泣け。…
 ああ、勇士たちは戦いのさなかに倒れた。ヨナタンは、あなたの高き所で殺された。わが兄弟ヨナタンよ、あなたのためわたしは悲しむ。…ああ、勇士たちは倒れた。戦いの器はうせた」。(サムエル記下1・19‐27)
ダビデは、サウル王に対して一度も不忠を働くことはありませんでした。自分の命を狙われても、恨みを抱かず許し、敬意を払い続けてきたのです。それはひとえに彼が主なる神様に選ばれた者だったからです。
サウル王と愛する兄弟ヨナタンを共に失った時、ダビデは、彼らのために涙を流し、切々と哀悼を捧げることによって、サウルの業績を相続しその位置に立つに相応しい者となります。主なる神様がエッサイの子らの中から見出した者が全イスラエルを治める時が一歩近づきました。

 

イスラエルの覇権をめぐる戦い

サウル王を失ったイスラエルでは、将軍アブネルが、サウルの子イシボセテを推し立てて王とし、王国を掌握しました。一方、ダビデはこれからどう行動すべきか、主なる神様に祈り求めました。そして、神様が命じた通りに、ユダ地方の人々をまとめていきました。この時から2年の間、イスラエル国を二分する戦いが続くことになります。ユダの地では王と慕われるダビデに対して、イスラエルの有能な将軍、ネルの子アブネルが挑みかかりました。しかしダビデの勢力は衰えることなく、戦いに勝って次第に力をつけていきます。

これ以上ダビデが強くなることを恐れたアブネルは、一計を図り、ダビデに和解を申し入れました。ダビデは、最初の妻ミカルを連れてくることを条件に会見を受け入れました。ダビデのもとに来たアブネルは、自分がイスラエルの長老、部族の代表者らを集めて、ダビデに従うようにする、と約束をしました。ダビデとアブネルとの間には合意がなされたように見えました。
しかし、ダビデの家臣ゼルヤの子ヨアブは、弟を将軍に殺された恨みがあるので、ダビデの意に反してアブネルを暗殺したのです。ヨアブは仇を討ったのですが、ダビデはアブネルのために悲しみ、哀悼の歌を歌いました。ダビデはアブネルに対して、幼い彼をサウル王に引き合わせてくれた恩義があったのです。

 

全イスラエルの王に推挙される

アブネルを失ったイシボセテは、気力を失い、イスラエルの民も慌てました。それを見た側近の略奪隊長レカブとバアナは、イシボセテが家で昼寝をしているところを襲って、彼の首をはねました。彼らはその首をダビデのところに携えてこう言ったのです。

 

 「あなたの命を求めたあなたの敵サウルの子イシボセテの首です。主はきょう、わが君、王のためにサウルとそのすえとに報復されました」。(サムエル記下4・8)

 

しかし、ダビデは主君を裏切る者を快く思わず、主を恐れない悪人として、かつてサウル王に止めを刺したアマレクの若者のように彼らを殺害しました。哀れなイシボセテの首はアブネルの墓に葬ってやったのです。
かつて自分の命を狙ったサウル王に対して恨みを抱かず、自らの手で殺害することさえ考えたことのなかったダビデです。サウル亡き後のイスラエルの民たちに対しても正しく振舞っていました。
指導者の居なくなったイスラエルの民は、長老、部族長を立てて、ようやくダビデの下に集いました。彼らは、「主はあなたに、『あなたはわたしの民イスラエルを牧するであろう。またあなたはイスラエルの君となるであろう』と言われました」(サムエル記下5・2)と言って、ダビデを全イスラエルの王として推挙しました。そして、主の前で契約を結び、ダビデに油を注いで王としました。

それからダビデはエブス人が住むエルサレムの要害に攻め入り、王の都としました。これ以後、シオンの丘にあるエルサレムはダビデの町と呼ばれるようになります。
ダビデが王になったのは30歳。ユダの地を治めたのが7年半、イスラエル全土を治めたのが33年、合せて40年余り統一王国の王として君臨するのです。ダビデ時代に王国は栄えていきます。それは、「万軍の神、主が彼と共におられた」(サムエル記下5・10)からです。

Category: 誌面説教