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イスラエルの伝統を築いた人々 その7:ダビデ③

<成和学生会報2016年7月号掲載>

 

油注がれた者への敬意

 
ダビデがサウル王から身を隠している間、イスラエル王国は内憂外患の最中にありました。勢力を増すペリシテ人が、イスラエル侵略を狙っています。それにも関わらず、悪霊に悩まされるサウル王は、若きダビデに対して嫉妬の炎を燃やし続けていました。
サウル王は、ペリシテ人との戦いから引き上げると、ダビデの息の音を止めるために有能な兵を率いて、彼を探しに出かけるのでした。王がエンゲデの野の“ヤギの岩”と呼ばれるところまで来たとき、ほら穴で休息をとりました。ところがその穴の奥には、ダビデとその従者が身を隠していたのです。
ダビデの従者は、今こそ王を殺すチャンスだと喜びましたが、ダビデはこっそりサウル王の上着の裾を切るに留めました。それさえも後で心を痛め、悔い改め、従者をいさめて言いました。
「主が油を注がれたわが君に、わたしがこの事をするのを主は禁じられる。彼は主が油を注がれた者であるから、彼に敵して、わたしの手をのべるのは良くない」。(サムエル記上24:6)
たとえ今は神様のみ意に適わなくなったとしても、神様が選び立てられた王を自らの手で裁くことはできないダビデでした。正しい裁きは常に神様の御手の中にあります。
何も気づかずほら穴から出たサウル王を追って、ダビデは声をかけました。彼は密かに王を殺すこともできたのに、そうはせず、王に対して罪を犯したことがない、と訴えました。
それを聞いたサウル王は泣きました。自らの過ちを悔いて言いました。
「今わたしは、あなたがかならず王となることを知りました。またイスラエルの王国が、あなたの手によって堅く立つことを知りました。」(サムエル記上24:20)
その日、サウル王はダビデを追うのを止め、そのまま引き上げました。

 

敵陣に逃れるダビデ

 
ダビデは王のもとには戻らず、荒野に留まっていました。心変わりしたサウル王は、また三千の兵を連れてダビデを撃つために荒野に分け入り、陣をはりました。
ダビデは夜密かに陣営に忍び込み、サウル王に手を掛けず、彼のまくら元に置いてあった槍と水入れだけを持ち去りました。サウル王も従者らもみな眠りこけて、そのことに気づきませんでした。
翌朝、ダビデは、向かい側の山の頂きに立ってサウル王の槍と水入れを示しながら、側近アブネルを叱責しました。王を狙う者の侵入を防げなかったからです。そして、サウル王には以前と同じように訴えました。
この日も事なきを得ましたが、身の危険を感じていたダビデは、サウル王の権威が及ばない敵方ペリシテ人の地に逃れることにしました。ガデの王マオクの子アキシにとり入って、田舎町に住むことを許されました。ペリシテ人から見れば、イスラエル王から追われた反乱分子にしか見えません。アキシはダビデを受け入れました。ダビデは、1年4カ月の間ペリシテ人に仕え、辺境の民を襲っては、あたかもイスラエルと戦いを交えているように見せたのです。

 

サウル王の死を嘆く

 
この後、ペリシテ人が本格的にイスラエルに戦いを挑んできました。アキシは、ダビデを信頼して護衛長として陣営に加えようとしました。しかし、他のペリシテの将たちは、ダビデを信用せず、彼を帰還させました。
ダビデと従者らが住まっていた町に戻ってみると、すでにアマレク人が町を責め、捕虜と財物を奪って出た後でした。今この時に、ペリシテに組みする軍勢を追撃していいものか、躊躇しました。主に祈り、追撃の許可を得たので、急ぎ、アマレク軍を追ってこれを撃ち、奪われた捕虜と財物をすべて取り戻しました。
この戦いで、ダビデは領民の信頼を回復し、イスラエルとペリシテの狭間にあったユダ地方で基盤を固めて行くことになりました。
イスラエルとペリシテの戦闘は激しさを増し、サウル王の軍勢は次第に敗戦の色を強めていきます。彼らはギルボア山まで追い詰められ、そこで、サウル王の子ヨナタン、アビナダブ、マルキシュアが殺されました。そしてついにサウル王も敵の矢に射抜かれ、倒れました。名誉を重んじる王は、自らの剣を立て、その上に身を投げて自害しました。
サウル王とその子ヨナタンの死の知らせを聞いたダビデは、彼らのために深い哀悼を捧げました。
 「イスラエルよ、あなたの栄光は、あなたの高き所で殺された。ああ、勇士たちは、ついに倒れた。」(サムエル記下1・19)
神様が油注いだ王への敬意を失わず、王のために涙を流したダビデが、いよいよ新しい王となるべき時を迎えたのです。

Category: 誌面説教