イスラエルの伝統を築いた人々 その7:ダビデ②
<成和学生会報2016年5月号掲載>
魂を慰める歌びと
後世の人たちは、イスラエル統一王国の第二代王ダビデを次のように評しています。
「彼はいかなる業をなしたときも、聖なるいと高き方を栄えある言葉で称賛し、心を尽くして賛美の歌をうたい、自分の創造主を愛した。彼は祭壇の前に歌い手たちを立たせ、美しい声で歌をうたわせた。こうして彼らは毎日賛美の歌をうたうことになった。彼は祭りを荘厳なものにし、祭りの手順を完璧に整え、人々に主の聖なる御名をたたえさせて、暁とともに美しい声を聖所に響かせた。」(シラ書47・8-10)
ダビデは創造主への愛を賛美の歌で表現しました。幼い頃からその才能に恵まれ、琴を片手に主を賛美する歌声は心地よく、荒んだ心を潤し、悩める魂を慰めるものでした。
少年時代のダビデがサウル王に見出される経緯を聖書はこう記しています。
サウル王は、神様から見放され、夜ごと悪霊に悩まされるようになりました。心配した家来は、王の魂を鎮める琴の名手を探し出しました。
「わたしはベツレヘムびとエッサイの子を見ましたが、琴がじょうずで、勇気もあり、いくさびとで、弁舌にひいで、姿の美しい人です。また主が彼と共におられます」。(サムエル上16・18)
家来の進言を受け入れた王は、早速エッサイのところに人を遣わして、ダビデを連れてくるよう命じました。我が子が神様の召命を受けたことを知る父のエッサイは、その子ダビデを気遣いながら、王のもとへ送り出しました。
ダビデは、サウル王が悪霊に悩まされると傍らで琴を奏でました。すると王の気分は静まり、悪霊が離れていくのでした。こうして、ダビデは王に仕えるようになったのです。
イスラエルを挑発する巨人ゴリアテ
聖書には、少年ダビデがサウル王に見出されるもう一つの物語が語られています。
長年イスラエルを悩ませてきたペリシテ人が、またも戦列を組んで戦いを挑んできました。サウル王はイスラエルの兵を率いて防戦の構えを見せ、両陣営はエラの谷を挟んで対峙しました。
その時、ペリシテの陣営から、身の丈3メートルもあろうかという大男が甲冑をまとい槍と盾を手に出てきました。名をゴリアテというこの大男は、イスラエル人を侮蔑し、挑発し始めました。
「わたしひとりを倒すことができれば、我々はイスラエルの家来になってやるぞ」というのです。
イスラエル軍は皆怖れて名乗りを上げる者がいません。両陣営は硬直したまま、ゴリアテは40日間も挑発し続けました。
ゴリアテを倒す少年ダビデ
羊飼いの少年だったダビデは、父の言いつけで、戦場にいる兄たちに食糧を届けに来ました。この時彼は、巨人ゴリアテの侮蔑の言葉が耳に入り、それに怯えるイスラエル軍の光景を目の当たりにしたのです。神様に信頼を置くダビデは、不遜なペリシテ人に憤りを覚えました。そして、兄たちが制するのも聞かず、戦いに名乗りを上げました。
鎧も身につけることができないほど幼い少年の姿に、さすがにサウル王もためらいました。しかし、ダビデには自信がありました。これまで羊を守るために幾度も危険な目に遭っています。石投げ一つで獅子や熊を倒したこともありました。勇気をもって闘えば、生ける神様が勝利に導く確信が彼にはありました。
ダビデは羊飼いの杖と石投げと五つの石だけをもって、ゴリアテの前に進み出ました。少年を侮る敵に向かってダビデは叫び声を上げます。
「わたしは万軍の主の名、イスラエルの軍の神の名によって、おまえに立ち向かう。きょう、主は、おまえをわたしの手にわたされるであろう。わたしは、おまえを撃って、首をはね、ペリシテびとの軍勢の死かばねを、きょう、空の鳥、地の野獣のえじきにし、イスラエルに、神がおられることを全地に知らせよう。」(サムエル上17・45-46)
ダビデはすかさず石を取り、石投げでもって近づくゴリアテに投げつけると、石は見事彼の額に命中しました。この一撃で大男は地に倒れ、勝敗は一瞬で決まりました。ダビデは走り寄り、ゴリアテの剣を取って彼の首をはねました。予想外の出来事に、ペリシテ人は怖れをなして逃げ出し、イスラエル人は気勢を上げて敵を追撃しました。
ダビデの勇敢な振る舞いに、サウル王も注目しました。将軍アブネルに伴われて王に接見したダビデは、そのまま家来として召し抱えられることになったと言います。
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