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イスラエルの伝統を築いた人々 その6:サウル③

<成和学生会報2016年3月号掲載>louvre_rosa_apparition

 

サウル王の治世

イスラエル民族はカナン入植後も、緩やかな十二部族連合の形態を保ってきました。周辺諸国から攻撃を受ける度に、士師の活躍でその場をしのいできました。ところが、強力な軍事力をもつペリシテ人の勃興は、イスラエル民族にとって大きな脅威となりました。

主なる神様を王として抱くイスラエルの伝統に反して、人々は強い王を求めるようになりました。戸惑うサムエルに神様は王国を建てることを許されたので、サムエルもこれに従いました。こうしてサムエルが油注いだ最初の王がサウルでした。
サウル王の登場によって、イスラエル民族は統一王国へと姿を変え、外的の侵略から国民を守る軍事力を備えていきます。王は同族の者や国内の有能な若者を訓練して、国力を高めていきました。
イスラエル統一王国の最初の王として、サウルに託された使命は大きく、彼が担った責任も非常に重いものでした。一人の人間が強力な権力で国民を支配する絶対専制君主としてではなく、神様のことばに耳を傾け、神のみ旨にかなった方向に国民を導く王でなければなりませんでした。これまでのいかなる国も経験したことのない国王のあり方を示さなければなりません。預言者サムエルと一つとなり、彼を通して告げられる神様のみ言に従わなければなりませんでした。

 

悪霊に悩まされるサウル

ところが、アマレク人との戦いにおいて、神様のみ言に完全に従うことができなかったサウルは、悪霊に悩まされることになります。それは生涯彼を苦しめ、彼の判断を狂わせることになります。
王の苦しむ様子を心配した家来たちは、琴の名手を探し出して、悪霊を鎮めるよう手配しました。家来たちが見つけ出した琴の名手が後に第二代の王となるダビデです。まだ少年だったダビデはサウル王に召し抱えられ、夜ごとに琴を奏でて王の心をなだめました。
サウル王は、ダビデに目をかけ、側近として訓練し、やがて千人の将にまで育てました。サウルそ王はこのダビデに支えられていたのですが、彼が功績を立てる度に、彼に対する国民の人気は高まるばかりで、強い嫉妬心が芽生えてきました。
権力に固執するようになったサウル王の不安は、ダビデに対する嫉妬をさらに強め、彼を殺す機会を伺うことになりました。ダビデは一度もサウル王に刃向かうことはありませんでしたが、王が執拗に命を狙うので仕方なく敵方に亡命せざるを得なくなりました。
この間に、サウル王と決別して身を隠した預言者サムエルも亡くなりました。

 

サムエルの霊にすがる

そんな中、再びペリシテの軍勢が迫り、イスラエルを脅かすようになります。ダビデを失い、預言者サムエルも世を去ったイスラエルに迫る敵国の脅威に対して、この時サウル王は非常に恐怖を覚えました。判断力を失い、自分ではどうしてよいかわからず、主なる神様にすがりました。しかし、「サウルを捨てた」といわれる神様は、彼の祈りに何ら応えることはありません。
窮したサウル王は、密かに霊媒師の女を訪ねて、預言者サムエルの霊を呼び出し、方策を尋ねたのです。ところが、霊界から現れたサムエルは、厳しいことばをサウル王に向けたのです。
 「なぜ、わたしを呼び起して、わたしを煩わすのか。主があなたを離れて、あなたの敵となられたのに、どうしてあなたはわたしに問うのですか。」(サムエル記上28・15,16)とサムエルは彼を叱責しました。そして通告します。
 「主は王国を、あなたの手から裂きはなして、あなたの隣人であるダビデに与えられた。…主はまたイスラエルをも、あなたと共に、ペリシテびとの手に渡されるであろう。あすは、あなたもあなたの子らもわたしと一緒になるであろう。また主はイスラエルの軍勢をもペリシテびとの手に渡される」。(サムエル記上28・17,19)
すでに言われていたことですが、改めてきっぱりと通告された、その裁きの言葉にサウル王は打ちのめされ、しばらく立ち上がることができませんでした。

 

ギルボアの戦い

しかし、敵は目前に迫っていました。ペリシテの軍勢は地中海沿岸を北上してきます。失意のサウル王でしたが、兵を率いて北部エズレルの野に陣を構えて敵を迎え撃ちました。しかし、この時のイスラエルに勝機はなく、逃げまどう兵士らをペリシテ軍が襲い、サウル王の子ヨナタン、アビナダブ、およびマルキシュアが殺されました。さらに、敵の矢はサウル王を射抜き、致命傷を負わせました。敵の辱めを受けることを嫌った王は、その場に剣を突き立て、その上に身を投げて自害しました。これがサウル王の最期でした。

Category: 誌面説教