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イスラエルの伝統を築いた人々 その4:ルツ

<成和学生会報2015年9月号掲載>c2b573ea

 

選民の系譜に刻まれた婦人

しばらく勇壮な士師たちの物語が続きました。ただ、イスラエルの伝統は、信仰深い婦人たちによっても築かれてきたことを見逃してはいけません。


マタイ福音書の冒頭には、アブラハムからイエス・キリストまでの系図が記されています。そこに特別な使命を果たした4人の女性の名が見出されます。タマル、ラハブ、ルツ、ウリヤの妻(バテシバ)です。3人目のルツは士師時代の人物とされ、聖書は、彼女のために一巻の美しい物語を著しました。
ルツは死海の東方に住むモアブ人でした。アブラハムの甥ロトを先祖に持つこの民族は、イスラエルの遠い親戚に当たります。なぜ異邦の女の名が選民の系譜に刻まれているのでしょうか。

 

ナオミを襲った不幸

ベツレヘムにエリメレクという人物がいました。この一族は、ユダのためにタマルが産んだペレヅの家系に属しています。妻の名はナオミ。この夫婦には、二人の息子がいました。あるとき、飢饉のために、故郷を離れモアブに移り住みました。しかし、不幸なことに間もなくエリメレクは亡くなり、ナオミと二人の息子が遺されました。彼らは成長して、モアブの女性を妻に迎えます。その一人がルツです。
しばらくは平穏な日々でしたが、再び不幸が彼らを襲いました。息子たちが亡くなったのです。夫も息子たちも失ったナオミは、嫁と共に故郷に帰ることにしました。しばらく進んだものの、寡婦となっても姑に従って異国に移り住む嫁たちが不憫に思えました。そこで、ナオミは嫁たちが実家に帰ることを許し、彼女たちの幸福を祈りました。

 

姑に従う嫁ルツ

姑と離れようとしない嫁たちでしたが、ナオミの説得に応じて一人は帰っていきました。しかし、ルツの固い決心は変わらず、こう言いました。
 「わたしはあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です。」(ルツ1・16)
イスラエルの神を慕い、エリメレク家の嫁として生涯義母に侍ると言うルツの言葉に、ナオミの心は打たれました。忠実な嫁を伴い故郷ベツレヘムに戻りました。ナオミは夫エリメレクの家門を存続する道はないものかと考え、裕福な親戚のボアズを頼りにしていました。

 

落ち穂拾い

季節はちょうど大麦の収穫期です。ルツはナオミのために畑に出て落ち穂を拾い、生活の糧を得ることにしました。麦畑で農夫が取りこぼした穂は、寄留の他国人と孤児と寡婦のために残しておくのが、守るべき神の教えでした。
「あなたがたの地の穀物を刈り入れるときは、その刈入れにあたって、畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。またあなたの穀物の落ち穂を拾ってはならない。貧しい者と寄留者のために、それを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。」(レビ23・22)と律法に記されています。それは、イスラエル民族もかつて異国で苦労したことを忘れないためでした。
ルツが畑に出て落ち穂を拾っていると、その姿がボアズの目に留まりました。姑に従順な嫁のうわさを聞いていたボアズは、ルツが困らないように何かと便宜をはかってやりました。

 

ボアズの贖い

ルツは畑であったことを全て姑に報告しました。息子亡き後、ボアズこそルツに相応しい相手だと悟ったナオミは、彼女をボアズのもとに送ります。
ルツはナオミの指示通り密かにボアズを訪ね、近い親戚としての義務を果たすよう懇願しました。それは、ナオミの持つエリメレクの土地を買い取り、自分を妻に迎えてエリメレクの家名を残すということです。しかし、第一の権利を持つ親戚がもう一人いることを知っていたボアズは、一時の欲望に負けず、律法に則って正しく行動しました。
翌朝ボアズは、もう一人の親戚と十人の長老を集めて、この件を会議にはかりました。その親戚は贖いの権利を放棄し、ボアズに譲渡しました。そこで、 ボアズは、エリメレクの家名を残すことを宣言し、ルツを正式に妻としました。長老たちも彼を祝福したのです。
やがてルツは男の子を産み、その子はオベデと名付けられます。友人たちは、ナオミの苦労が報われたことを喜びました。
 「主はほむべきかな、・・・どうぞ、その子の名がイスラエルのうちに高く揚げられますように。彼はあなたのいのちを新たにし、あなたの老年を養う者となるでしょう。あなたを愛するあなたの嫁、七人のむすこにもまさる彼女が彼を産んだのですから」。(ルツ4・14-15)
オベデの子がエッサイ、エッサイの子がダビデです。統一王国の王となるべき人物が誕生するまでには、神様のみ言を忠実に守り、義母に侍ったルツの献身があったのです。

Category: 誌面説教