Subscribe via RSS Feed

神様と共に歩んだ父祖たち その4:ヨセフ⑦

<成和学生会報2014年3月号掲載>

 

涙の和解

 「父の魂は子供の魂に結ばれているのです。」(創世記44・30)このユダの言葉は、ヨセフの胸を打ちました。子を失った経験をもつユダは、父の悲しみが痛いほど分かったのです。我が子が生きていても、たとえ死んでいても、永遠に忘れることのできないのが親の心です。それが分かれば分かるほど、自分たちが弟ヨセフにしたことが、親に対してはどれほどひどい仕打ちであったか分かり、心から悔いていたに違いありません。ユダの言葉は真実だったからこそヨセフの心を溶かしたのです。

ヨセフは声をあげて泣き、その声はエジプト人たちにも聞こえたといいます。ヨセフの突然の告白に兄たちはみな驚き恐れました。嫉妬のあまり奴隷として売り飛ばした弟が、今やエジプト一の権力者となって目の前に立っているのです。どんな報復を受けてもおかしくないのです。ところが、ヨセフは兄弟を引き寄せてなだめました。自分にしたことで嘆くことも、悔いることもないと言うのです。

 「神は、あなたがたのすえを地に残すため、また大いなる救をもってあなたがたの命を助けるために、わたしをあなたがたよりさきにつかわされたのです。それゆえわたしをここにつかわしたのはあなたがたではなく、神です。」(創世記45・7-8)

ヨセフはここに来て、これまでの苦労の意味を悟ったのです。奴隷の身に転落しても、牢獄に入っても、必ず守られ引き上げられてきました。その全てはヤコブ一家が生き延びて幸福を得るたに、神の御手によって導かれてきたものだったとの確信を得ました。

そこで、エジプトで見たことの全てを伝えて、父をここに連れて来てほしいと頼みます。飢饉がまだ5年は続くことが分かっていたので、食料の蓄えのあるエジプトに父と兄弟一族を呼び寄せ、存分に親孝行したいと思ったからです。

ヨセフは、20年間の空白を埋めるかのように、弟ベニヤミンと抱き合って泣きました。兄たち一人ひとりとも同じようにしました。

 

エジプト人の歓待

ヨセフの兄弟たちが来たという情報はすぐさまパロに伝わりました。奴隷として売られてきた異国人が、宰相にまで上りつめた後に、親族を迎えるとなると、一歩間違えば、ヨセフもスパイの嫌疑をかけられ失脚しかねないできごとでした。

ところが、パロも家来たちも皆喜んでくれました。ヨセフはエジプトでそれだけの信頼を勝ち得ていたのです。パロは、ヤコブの一族が移住するための手配を家来に命じ、速やかに安全にヨセフが父を迎えられるよう取り計らってくれました。またエジプト定着後の生活に対しても手厚い保護を約束してくれたのです。

パロの後押しによりヨセフも安心して兄を送り返すことができました。

 

ヤコブ一族のエジプト移住

父のもとに戻った兄たちは、エジプトで起ったことを漏らさず父に話しました。「ヨセフはなお生きていてエジプト全国のつかさです」。(創世記45・26)

死んだはずの息子が生きていたとの知らせはヤコブを驚かせ、にわかに信じることができません。ヨセフからの迎えの車が到着して、ようやく信じることができました。死ぬ前に一目でも息子を見たいという思いはあるものの、故郷を離れてエジプトに移住するとなると躊躇するヤコブでした。この地は父祖アブラハムに神が導き与えた“約束の地”です。その地を離れることは許されないし、老いた身で旅することにも不安がありました。

そんなヤコブに神は再び幻に現れて言いました。

 「エジプトに下るのを恐れてはならない。わたしはあそこであなたを大いなる国民にする。わたしはあなたと一緒にエジプトに下り、また必ずあなたを導き上るであろう。」(創世記46・3-4)

エジプトに下り、そして再び連れ帰るとの神の約束です。ハランに下る時もそうでした。計り知れない神の計画があると悟ったヤコブは、移住を決意しました。子、孫を含む一族の者たち70人を連れて出発しました。父の到着を待ちわびたヨセフは、ゴセンの地まで迎えに出てきました。生き別れた親子は、そこで涙の再会を果たしました。

ヤコブが移住したのが130歳の時。それから、彼はパロの厚遇を受けて17年過ごして逝きました。死の間際に、ヨセフの子、エフライムとマナセをわが子として祝福し、12部族の一員に加えました。また、12人の息子たちの行く末を語り祝福しました。彼らの子孫は生み増えて、やがてイスラエル民族を形成するのです。

ヤコブは、間もなくヨセフらに看取られ息を引き取り先祖の列に加えられました。その亡きがらは、遺言通りマクペラにある父祖アブラハム、イサクの墓所に葬られました。

Category: 誌面説教