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神様と共に歩んだ父祖たち その3:ヤコブ④

jacob<成和学生会報2013年6月号掲載>

故郷に帰れ !あなたと共にいる!

 「あなたの先祖の国へ帰り、親族のもとに行きなさい。わたしはあなたと共にいるであろう」(創世記31・3)

ラバンの息子たちが、苦労の末に財を築いたヤコブに妬ましい思いを抱くようになると、ラバンの態度もさらに硬化していきました。この時になって、神様はヤコブに語りかけました。20年ぶりのメッセージは、「故郷に帰れ!」という命令でした。かつてベテルで交わした約束が果たされる時が来たのです。

父祖アブラハムが召命を受けた時と同じく、神様のみ言はヤコブの心に強く響きました。この時から、ヤコブは積極的かつ賢明に動き始めます。それは、神様の約束が成就するまで彼自身が越えていかなければならない峠が、まだいくつかあることを知っていたからです。

まず、伯父ラバンの主管から抜け出さなければなりません。覚悟を決めたヤコブは、密かに妻ラケルとレアを呼び、神様の命令が下ったことを打ち明けました。妻たちの同意を得るつもりでしたが、彼女たちの反応は意外にも積極的でした。夫を軽んじ、娘の自分たちも他人のように扱う親兄弟よりも、夫を導く神様に従うことを選択したのです。

ラバンとの対決

善は急げ。ヤコブはすぐさま妻子や家畜を率いて、密かに出発しました。目指すは父イサクの待つ故郷です。この時、ラケルは父親の所有するテラピムを誰にも知られず盗み出しました。テラピムは小さな偶像ですが、正当な相続権を示す実印のようなものです。これを奪っておけば、ヤコブが正当に手にいれた財産を、ラバンが家長の特権をかざして奪い取ることができなくなるからです。

ヤコブが逃げ去ったことに気付いたラバンは一族を率いて彼らを追跡し、一週間後にようやく追いつきました。ここでヤコブはラバンと正面から対決します。

ラバンは、ヤコブが挨拶もせずに出発したことを誹り、テラピムを盗んだと叱責し、見つけ出して彼の財産までも奪い取る魂胆でした。しかし、何も知らないヤコブは堂々と身の潔白を主張することができました。ラケルが機転を利かせて隠し通したので、テラピムが見つかることもなく、ラバンが折れました。両者は、境界線を引き、互いに干渉しないことを誓う契約を結びました。これで、ようやく後方の憂いを解いたヤコブは、今度は前方で待つ大きな関門に向かって行くのです。

贈り物の波状攻撃

しかし、ヤコブの闘いはまだ始まったばかりです。彼は旅を続け、ヨルダン川の支流ヤボク川に到達しました。そこで彼を護衛してきたみ使いたちを見るのです。21年間ラバンの下で苦労の道を歩んだとしても、子供たちの誕生をめぐり争う妻たちの間にあったとしても、ここまで導き守ってきたみ使いたちがいたことをはっきりと知りました。彼は、その地を“神の陣営(マナハイム)”と呼びました。盤石の守りを得て心強く思ったヤコブは、次の行動に出ます。

兄エサウのもとに使者を遣わし様子をうかがわせました。すると兄は400人を率いて迎えに来ると言います。恐れを感じながらもヤコブは冷静に情報を分析し、和解の道を探るための策を練りました。人間的に考え抜いただけでなく、かつて“故郷に連れ帰る”と約束し、今は“帰れ”と言われる神様に祈り問いかけたのです。

夜になってヤコブは、ハランで得た財物の中から兄への贈り物を厳選して、5つのグループに分けました。より貴重なものが後にくるように並べて、順番にヤボク川を渡り進ませました。途中でエサウに出会ったら、「あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈りものです。彼もわたしたちのうしろにおります」(創世記32・18)と恭しく挨拶するように命じておきました。その後で妻子たちを渡らせました。

あなたはイスラエル

財産と家族らすべてを兄に渡し終えた時、ヤコブはただ一人対岸に残されました。身を持て余していたヤコブに今度は神のみ使いがつかみかかり、夜明けまで組打ちしました。ここでもヤコブは粘り腰を見せます。彼は執拗に食い下がり、一度つかんだ手を離そうとはしません。それならばとみ使いはヤコブの“もものつがい”を打ったので、関節がはずれてしまいました。足を引きずりながらもヤコブは戦いを放棄せず、とうとうみ使いに負けを認めさせました。

 「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです。」(創世記32・28)

ヤコブは、この時はじめて人間が天使の試練に打ち勝つことができることを示しました。そこから子孫たちが受け継ぎ、選民が冠することになる“イスラエル”という名が出てきます。

Category: 誌面説教