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預言者の道を歩まれたイエス・キリスト その6:エレミヤ

若き日の召命

 預言者ホセアやアモスが、王と神の民に悔い改めを迫った紀元前8世紀。彼らの努力も虚しく北イスラエル国は滅亡しました。かろうじて存続してきた南ユダ国も、一世紀余りが過ぎて、北と同じ道をたどり始めていました。

 この時、神様はアナトテ出身の祭司ヒルキヤの子エレミヤを召し出しました。まだ20歳になったばかりのエレミヤに神様はこう語りかけます。

 「わたしはあなたをまだ母の胎につくらないさきに、あなたを知り、あなたがまだ生まれないさきに、あなたを聖別し、あなたを立てて万国の預言者とした」(エレミヤ1・5)

 あまりのことに恐れ戸惑うエレミヤに神様はさらに強く、恐れるなと言われます。

 「見よ、わたしの言葉をあなたの口に入れた。見よ、わたしはきょう、あなたを万民の上と、万国の上に立て、あなたに、あるいは抜き、あるいはこわし、あるいは滅ぼし、あるいは倒し、あるいは建て、あるいは植えさせる」(同1・9-10)

 「万国の預言者とする」という神様の呼びかけは青年の心に圧倒的に迫ります。神様の存在を知らず、人々の不幸にも鈍感で、国は世界の窮状に目を留めず、己の幸福と安逸を貪るこの国の現状を如何にすべきか。若者の心に渦巻いていた疑問も葛藤も、その一切を蹴散らしてしまうほどに神様はその存在感を示します。

 後にイエス様は弟子たちに言われました。「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだのである」(ヨハネ15・16)復帰摂理歴史をかけて、使命を託すことのできる人物を探してこられた神様が、この時声をかけたのがエレミヤでした。彼がこの召命に答えたので、神様のみ言は人々の耳に届きました。

嘆きの預言者

 エレミヤに託された預言は、しかしながら人々には耳に痛い言葉でした。既に滅び去ってしまったイスラエルさえ許されるほど、エルサレムの背信は神様の目には耐え難いことだとあからさまに言われ、厳しい裁きが告げられます。

 「災が北から起って、この地に住むすべての者の上に臨む」(エレミヤ1・14)「わたしが北から災と大いなる破滅をこさせる」(同4・6)

 かつてユダヤの民は仲睦まじい夫婦のように神様と親しい間柄だったのに、若き日の純情な心を忘れ、不貞を働く女のようになってしまったと言います。それでも、エレミヤは裁きの背後に秘められた神様の苦悩を感じ取ります。愛に裏切られ、夫婦の契りを引き裂かれた者のような呻きが漏れ聞こえてきます。

 「ああ、わがはらわたよ、わがはらわたよ、わたしは苦しみにもだえる。」(同4・19)愛する相対を愛することができず、裁かざるを得ない苦痛はどれほど大きいでしょうか。預言者の苦悩は、神様の苦悩と重なっていきます。

 その苦悩を増幅させたのは、職業預言者たちの態度でした。国の行くべき方向を正しく示し、民を導くべく立てられた職業預言者たちは、いつしか感性が鈍り、己の保身のために、エレミヤの語る言葉は偽りの預言だと非難し、甘い言葉で民を励まし、神の民に滅びなどあるはずがないと高をくくっていました。

 エレミヤは言います。「彼らは、手軽にわたしの民の傷をいやし、平安がないのに『平安、平安』と言っている。」(同6・14)神様から召命され、神様の本来の願いを見据えた預言者は、神様との親しい関係を結ぶ以外に真の平安、真の幸福はないことを知っているのです。

神の子の苦悩

 神と民との狭間に立つ預言者の苦悩も深いものでしたが、神のひとり子として来られたイエス様にとっては、偽りの父、サタンが支配するこの世においては、創造理想を完成するまでひと時も休まるところはありません。

 「地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。」(マタイ10・34)と言われるイエス様。“平和の君”、メシヤの言葉としては厳しく直ちには受け入れがたいものです。しかし、サタン文化の中に選民が安住してしまった時、一石を投じなければならないメシヤでした。彼らが目を覚まし、本来行くべき神様の理想に向き直るためにです。

 それでも悔い改めないのなら、裁きを下さざるをえません。2000年前のエルサレムは、エレミヤの時以上に深刻な状況に立たされていたのです。それは、人類の救い主が地上に来られていたからです。この方をあなたはどうするのか?この問いに全摂理歴史がかかっていました。この尊いお方を拒絶したとき、エルサレムは滅亡に向かったのです。

 「ああ、エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、おまえにつかわされた人たちを石で打ち殺す者よ…」(マタイ23・37)と嘆かれる神のひとり子イエス様の嘆きは、エレミヤの嘆き以上に深く激しいものだったことでしょう。

Category: 誌面説教